2022年度/1GAF027001
【金4】医療と社会 <前期>
「医学は根本的に社会科学である」とは、19世紀の医師ウィルヒョウの言葉とされる。この言葉は何を意味しているのだろうか。本講義は、医療分野に対する社会科学的・社会学的視点、研究・分析の概要を提示することを通して、この言葉の意味の本質の一端を示そうとする。具体的には、1)医療と社会の一般的関係性、健康・病気・医療の相互の関係性、近代医療から現代医療にいたる歴史的変容の3点を序論部分に、2)具体的対象事例として、病者、患者-医療者関係、保健医療職種、保健医療制度という、ミクロからマクロにいたる医療システムの構成要素、3)上記の項目外で、保健医療システムにとって必要不可欠の社会的要素として、ジェンダー、地域性、社会格差、労働を取り上げ、4)最後に、現代における医療と社会の関係を包括的にとらえる視点として、医療化、ケアの倫理、医療における死、というトピックをマクロの社会変動との関係において概説する。
- 担当教員氏名
- 進藤 雄三
- 科目ナンバリング
- 授業形態
- 講義
- 開講キャンパス
- 中百舌鳥
- 開講区分
- 週間授業
- 配当年次
- 1年
注意: 配当年次は学部・学科によって異なる場合があるので、UNIPAで確認してください。
- 単位数
- 2
注意: 実際の単位数は学部・学科によって異なる場合があるので、必ずUNIPAで確認してください。
- 到達目標
- 以下の能力を身につけることを達成目標とする。 1)医療の社会的側面を説明することができること。 2)現代の医療の特徴を、歴史的観点から説明できること。 3)日本医療の特徴を、歴史的かつ比較社会の観点から説明できること。 4)ジェンダー・家族、労働、地域社会と健康・病気の関わりを説明できること。 5)医療職種、病者、医療者ー病者関係に関する基本的知識を身につけること。
- 各授業回の説明
- 事前・事後学習の内容
- 準備学習の欄に記載してあるテキストの箇所を、事前に目を通しておくこと。各章の末尾に記載されている参考文献、また講義中に言及した文献を、講義の前後に読むこと。また、期末のレポート作成のために、日々メディアに記載される医療関連の情報に自覚的に接するように心がけ、関心を喚起しておくとともに、それぞれの授業でもレポートの主題となりうるテーマを意識して聴講すること。
- 成績評価方法
- 評価は、5項目の達成目標の達成度に基づきなされる。評価の方法は、参加度(20%)・コメント(30%)、およびレポート(50%)の総合評価(100点満点)によって行う。合格のための最低基準は、コメントの8割以上の提出、レポート提出およびレポート内容が一定の水準に達していることである。
- 履修上の注意
- 特になし
- 教科書
- 山崎・進藤・石川「社会学」医学書院、2012
- 参考文献
- 1) 中川輝彦・黒田浩一郎 編「よくわかる医療社会学」世界思想社、2010. 2) 進藤雄三「医療の社会学」世界思想社、1990. 3) 森田洋司・進藤雄三編「医療化のポリティクス」学文社、2006 4) 進藤雄三・黒田浩一郎 編「医療社会学を学ぶ人のために」、世界思社、1999、2003 5) P.コンラッド/J.W.シュナイダー著「逸脱と医療化」(進藤雄三監訳)ミネルヴァ書房、2003 6) N.クリスタキス著「死の予告ーー医療における予言と予後」(進藤雄三監訳)ミネルヴァ書房、2006
- オフィスアワー
- - 外部公開シラバスのためデータがありません / Please use UNIPA syllabus -
- 教員への連絡方法(メールアドレス等)
- - 外部公開シラバスのためデータがありません / Please use UNIPA syllabus -
授業 | 授業内容 | 事前・事後の学習内容 |
---|---|---|
第1回 | 概説: 医療と社会の関係性 1 医療と社会の関係性: 医療と社会はいかなる意味で関連するのか 2 公衆衛生・社会医学と医療社会学: 医療と社会の関連それ自体を対象とする学問領域の成立 3 医療への社会学的アプローチ: 医療を対象とした初の社会科学分野としての医療社会学、その切り口は何か | テキスト:序章(社会学)、第1章(基礎概念)、第2章(視点)、第3章(保健医療と社会学) |
第2回 | 健康・病気・医療 1 健康と病気: 医療概念の前提には健康・病気概念がある。それはそもそも何を意味するのだろう 2 健康の概念的整理: 健康ー病気連続体を、健康を独立変数にしてマトリクスを作るとどうなる、何が見える 3 医療と健康・病気: 医療と健康・病気の不可分性の理解の上に、医療それ自体が社会システムを成すことの理解の重要性 4 医療と社会学・社会科学: 医療社会学の誕生は20世紀半ばとはいえ、それは「公衆衛生」「社会医学」の系譜に連なる | テキスト:第3章(保健医療と社会学)、第5章(健康・病気・ストレスの新しい見方)、第14章(保健医療の現代的変化の位相) |
第3回 | 現代医療の歴史的位相 1 近代医療の誕生 1)近代医療の特徴 2)臨床医学から実験室医学へ 3)精神医学の誕生 4)近代医療への評価 2 現代医療:1970年代以降の変容 1)医学・医療の高度化 2)疾病構造の変化 3)マンパワーの変化 4)福祉国家の変容 3 結語: 2世紀に及ぶ医療の変容 | テキスト: 第14章(保健医療の現代的変化の位相) |
第4回 | 病者の視点: 病人役割、病気行動、病体験 1 病者と患者: 病者と患者、両者は何が違うのか。これが、結構、多分一番重要 2 病人役割: 医療社会学の、恐らく最も重要な基礎概念の一つ。なぜ、重要だったのか 3 病気行動と病経験: 「病者」の視点からのみ、病気行動、病経験は生まれた 4 結語: 病者の視点とは、社会的存在、生活者としての人間の観点から生まれる | テキスト:第3章(保健医療と社会学)、第8章(健康・病気行動と病体験) |
第5回 | 患者-医療者関係 1 コミュニケーション: よく聞くこの言葉、そもそもどのような構造を持っていて、どんな種類があるのだろう 2 患者ー医療者関係モデル: 20世紀の後半期、三つほどの基本モデルが提示されてきた 3 患者中心医療: 1990年代以降、世界的に喧伝され、主流化してきたモデル、と言える 4 結語: とはいえ、「医療」内部に参入した病者との、関係性をモデル化していることは理解しておく必要がある | テキスト:第3章(保健医療と社会学)、第9章(患者ー医療者関係とコミュニケーション) |
第6回 | 保健医療の専門職 1 専門職論から見た医療 1)専門職論 2)職業としての保健医療 3)専門職論から見た医療 2 看護職 1)コメディカルと看護職 2)専門職化 3)ケアという理念 3 結語 | テキスト: 第10章(保健医療と専門職) |
第7回 | 保健医療制度 1 保健医療制度をとらえる二つの水準 1)福祉国家と社会保障 2)保健医療システムと保健医療制度 2 日本保健医療システムの特徴I(制度) 1)供給と財政 2)三つの原則 3 日本保健医療システムの特徴II(運用) 1)供給面の特徴 2)外科手術と薬剤費等 4 日本保健医療の特徴III(まとめると) 1)WHOの優等生? 2)アクセスの良好性 3)収容中心 5 日本保健医療システムの改革方向 | テキスト: 第13章(保健医療制度) |
第8回 | 保健医療とジェンダー・家族 1 ジェンダーとは何か 1)生物学的vs社会的 2)多元的理解へ 2 性差と医療:病因としてのジェンダー 1)「生殖」 2)精神医学とジェンダー 3 医療職とジェンダー: ジェンダーの職業配分 1)職業とジェンダー 2)医療内分業とジェンダー 4 家族と医療 1)病因としての家族 2)日本的現象 5 結語: 日本における<医療と家族・ジェンダー> | テキスト: 第11章(性・ジェンダー・家族と保健医療) |
第9回 | 保健医療と地域社会 1 地域社会という言葉 1)地域社会 2)コミュニティ 2 ソーシャルサポートと社会関係資本 1)ソーシャルサポート 2)社会関係資本 3 ヘルスプロモーションと地域社会 1)ヘルスプロモーション 2)健康都市 4 ノーマライゼーションと地域社会 | テキスト: 第12章(地域社会と保健医療) |
第10回 | 保健医療と社会格差 1 社会格差と平等 1)格差と平等(その1) 2)格差と平等(その2) 2 健康格差の諸相 1)経済 2)職業 3)教育 3 健康格差発生メカニズム 1)物質主義論文化・行動論 2)社会的選抜論と社会関係資本論 4 格差是正の取り組み 5 結語: 日本における保健医療と社会格差 | テキスト: 第6章(健康・病気の社会格差) |
第11回 | 保健医療と「働き方」「働かせ方」 1 保健医療と資本主義 1)労働・職業・仕事 2)環境医学と産業医学 2 現代社会における職業 1)職業分類 2)職業構造・雇用慣行の変化 3 労働環境の影響 1)過労死・過労自殺 2)バーンアウト 3)ストレス研究 4 仕事と生活 1)ワーク-ライフバランスとワーク-ファミリーコンフリクト 2)仕事と家庭 5 結語: さて、日本の場合は? | テキスト : 第7章(「働き方」「働かせ方」と健康・病気) |
第12回 | 医療化論とヘルシズム 1 現代社会における医療 2 医療化論 1) 医療化論のルーツ 2) 医療化概念のニ側面 3) 現代的医療化論の範例 3 ヘルシズム論 1) ヘルシズム 2) 医療化とヘルシズム 3) 監視医療と医療化論 4 医療化論の生存力と効用 | |
第13回 | ケアの倫理と保健医療 1 ケアと医療 2 ケア論の誕生 1)ケア論の発見 2)現代的ケア論の論点 3 ケア論の現代的意義 1)ケアの倫理と正義論 2)近代社会の変容とケア論 4 ケア論の社会的意味 1)人間存在のあり方 2)ケアの提供者と受け手 結語:ケアの倫理と保健医療医療化という視点 | テキスト: 第15章(ケアと医療) |
第14回 | 死の医療化をめぐる現代的状況 1 「死の医療化」論のルーツ 2 問題提起の背景 3 現代において何が失われたのか 4 日本における死の医療化:比較における特徴 5 「自然死」をめぐる一考察 結語 | |
第15回 | 医療と社会:結語 |
Loading...
Updated on 2023/12/24 10:06:59