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2023年度/1FCB504010

【火3】日本法制史 <前期>

(公大) / 日本法制史特論A (公大) / 日本法制史 (市大)

この授業は講義形態で行われる。この授業では、近世後期〜明治初年における法・制度を主な素材に、時にそれ以前にも遡りつつ、所与のものと考えられがちな刑事法上、民事法上・裁判制度上の諸原則について、その歴史的な形成過程と意義、問題点などを考えることで、現行の法・制度を相対的に時に批判的に見る目を養う。日本法制史の概説書、参考文献(主に法制史論文)による予習を推奨し、各回講義の冒頭や途中で問題提起とそれに対する質疑応答を行ない、その上で重要な論点を中心に説明を行なう。

担当教員氏名
安竹 貴彦
科目ナンバリング
FCALAW83004-J1 (公大) / BCALAW62012-J1 (公大) / JAFUN7903 (市大)
授業管轄部署
ロースクール
授業形態
講義
開講キャンパス
杉本
開講区分
週間授業
科目分類
日本法制史
配当年次
1年 (公大) / 1年 (公大) / 学年指定なし (市大)

注意: 配当年次は学部・学科によって異なる場合があるので、UNIPAで確認してください。学年指定なしの表記は、要覧等を確認してください。

単位数
2単位 (公大) / 2単位 (公大) / 2単位 (市大)

注意: 実際の単位数は学部・学科によって異なる場合があるので、必ずUNIPAで確認してください。

到達目標
・近世後期から明治初年における法・制度の概略とその変遷を概説することができる。 ・上記を通じ、刑事法上、民事法上・裁判制度上の諸原則について、その歴史的な形成過程と意義、問題点などを考える  ことができる。
各授業回の説明
授業授業内容事前・事後の学習内容
第1回 法曹志望者が法制史を学ぶ意義 明治初年の大阪府や若松県などの刑事判決を主な素材とし、そこからうかがわれる当時の「実務法曹」の法意識を紹介することで、法制史を学ぶ意義について考える。 (前)事前配布する下記拙稿(「履修上の注意」参照)の該当章に事前に目を通し、講義の概要を予め理解しておく。 (後)講義中配布のレジュメ・資料も含めた形で改めて下記拙稿を精読し、理解を深める。
第2回 近世~近代における刑事裁判 江戸幕府・紀州藩・高野山などの吟味筋(刑事裁判)の特徴を概説し、なかでも「召捕と捜査」「司法と行政の未分離」「自白の有する意義と拷問」「裁判の独立」などの論点に重点を置いて考察を加える。 その後、明治期における断獄手続や治罪法などを主な素材として、刑事裁判の近代化の過程を概観するとともに、近世の刑事手続が有した問題点の克服とその残存につき、「精密司法」と評される現行刑事訴訟制度との連続性・断続性を念頭に置きつつ論じる。 (前)下記拙稿(「履修上の注意」参照)の該当章に事前に目を通し、講義の概要を予め理解しておく。 (後)講義中配布のレジュメ・資料も含めた形で改めて下記拙稿を精読し、理解を深める。参考文献のうちから指定されたものを熟読し、「精密司法」について理解する。
第3回同上同上
第4回同上同上
第5回 刑罰について考える~特別予防と一般予防、罪刑法定主義など~ 江戸幕府や各藩および明治期の刑罰体系・行刑制度の変遷について概観することで、「特別予防主義」の採用とその意義を検討し、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」、PFI刑務所などについて考える契機とする。また、「罪刑法定主義」の形成過程とその意義について再考するとともに、それに影響される条文の形式についても論を進める。 (前)下記拙稿(「履修上の注意」参照)の該当章に事前に目を通し、講義の概要を予め理解しておく。 (後)講義中配布のレジュメ・資料も含めた形で改めて下記拙稿を精読し、理解を深める。参考文献のうちから指定されたものを熟読し、「罪刑法定主義」の意義について理解する。
第6回同上同上
第7回 近世~近代における民事裁判 江戸幕府による出入筋(民事訴訟)の特徴と変遷過程を概説する。なかでもその特徴である「地域性と統一性」の問題を、江戸・京都と大坂とを、債権者保護と債務者保護、内済と取扱人・身代限などの論点を通じて比較することにより、近代との連続・断続を考察する素材を提供する。その後明治初年の聴訟手続を主な素材とし、民事判決原本なども利用しながら、勧解や身代限法制、民事における代言活動など、民事裁判の近代化の過程をいくつか紹介すると同時に、刑事裁判との差異・類似についても考察を加える。 (前)下記拙稿(「履修上の注意」参照)の該当章に事前に目を通し、講義の概要を予め理解しておく。 (後)講義中配布のレジュメ・資料も含めた形で改めて下記拙稿を精読し、理解を深める。参考文献のうちから指定されたものを熟読し、「民事訴訟の特性と地域性の存在」について理解する。
第8回同上同上
第9回同上同上
第10回 刑事と民事の分化について考える 近世における吟味筋(刑事裁判)と出入筋(民事裁判)の境界上の手続を紹介し、手続法が存在しないところで吟味筋と出入筋をどのように区別していたのかを探る。 (前)下記拙稿(「履修上の注意」参照)の該当章に事前に目を通し、講義の概要を予め理解しておく。 (後)講義中配布のレジュメ・資料も含めた形で改めて下記拙稿を精読し、理解を深める。参考文献のうちから指定されたものを熟読し、「民刑分離」について理解する。
第11回 法曹養成制度について考える 近世における実務法曹や公事宿、明治期における判事・検事・代言人など法曹養成制度・試験制度などの変遷と老朽司法官淘汰の過程、あるいは彼らに求められた素養の変化などについて概観する。(前)下記拙稿(「履修上の注意」参照)の該当章に事前に目を通し、講義の概要を予め理解しておく。 (後)講義中配布のレジュメ・資料も含めた形で改めて下記拙稿を精読し、理解を深める。
第12回同上同上
第13回 「自律性の縮減」の過程について考える 中世~近世の喧嘩両成敗法、式目密懐法、近世の密通仕置・敵討・妻敵討、刑罰としての下手人などを主な素材とし、さらに明治初年大阪府の刑事判決録にみえる幾つかの事件も紹介しつつ、近世~近代にかけての「自律性の縮減」の過程を概観し、「自力救済」や刑事裁判における被害者参加制度などの論点について考える手掛りとする。(前)下記拙稿(「履修上の注意」参照)の該当章に事前に目を通し、講義の概要を予め理解しておく。 (後)講義中配布のレジュメ・資料も含めた形で改めて下記拙稿を精読し、理解を深める。参考文献のうちから指定されたものを熟読し、「裁判権と刑罰権の独占」について理解する。
第14回同上同上
第15回 「法的安定性」と「具体的妥当性」について考える 幕府法および明治初年の判例などを素材に、「法的安定性」と「具体的妥当性」の関係について考える手掛りを与える。(前)下記拙稿(「履修上の注意」参照)の該当章に事前に目を通し、講義の概要を予め理解しておく。 (後)講義中配布のレジュメ・資料も含めた形で改めて下記拙稿を精読し、理解を深める。参考文献のうちから指定されたものを熟読し、「法定安定性と具体的妥当性の均衡」について理解する。
第16回期末試験
成績評価方法
(1)    到達目標の達成度について評価し、絶対評価で行う。 (2)    評価方法各講義における質問や議論への参加の状況:15% 小レポートによる評価:15% 学期末の試験:70% (3)    合格のための最低基準 近世後期から明治初年における法・制度の概略とその変遷を概説することができる。
履修上の注意
下記、拙稿「江戸~明治初年における法・制度の変遷」は印刷等の手段で事前配布する。予習・復習についてはこれを中心に利用する。特にレジュメには拙稿の参考ページを記入しておくので、該当個所は熟読しておくこと。講義はその前提で進行する。 また、下記の各回参考文献のうちいくつかは、小レポートの課題とするので、熟読しておくこと(講義中に指定する)。
教科書
指定しない。講義は単元ごとに配布するレジュメ・資料をもとに進行する。

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参考文献
・全体を通じた参考文献として、「江戸~明治初年における法・制度の変遷」(安竹貴彦作成、過去に担当したインターネット講座教材に毎年改訂を加えたもの) ・各回の参考文献は以下の通り。 第1回 「諸吟味書」(安竹・「諸吟味書」研究会、法学雑誌連載中)・「刑事御仕置伺書綴」(安竹・西川哲矢、法学雑誌2012~16)、牧英正・安竹『大阪「断刑録」-明治初年の罪と罰』(阿吽社、2017)など。 第2~4回 大平祐一「『日本的特色』の歴史的探求について―「精密司法」と江戸幕府の刑事手続について」(『「日本型社会」論の射程―「帝国化」する世界の中で』所収、文理閣、2005)、青木人志『大岡裁きの法意識-西洋法と日本人-』(光文社新書、2005)、「18 世紀半ば~19 世紀初めにおける大坂町奉行所の捜査・召捕とその補助者」(清文堂、2015)など。 第5~6回 石井紫郎他編『日本近代思想大系7 法と秩序』(岩波書店、1992 年)、重松一義『日本獄制史の研究』(吉川弘文館、2005)、拙稿「紀州藩の生命刑と牢番頭-『国律』成立以前を中心に」(部落問題研究201、2012)、「紀州藩の追放刑と牢番頭」(和歌山人権研究所紀要第4号、2013)、高塩博『近世刑罰制度論考-社会復帰をめざす自由刑』(成文堂、2013)、牧・安竹、上掲書など。 第7~9回 神保文夫「江戸幕府出入筋の裁判における本公事・金公事の分化について」(法制史研究45、1996)、 拙稿「寛保~延享期における大坂町奉行所の金銀出入取捌法改革」(大阪商業大学商業史博物館紀要8、2007)、宇佐美英機『近世京都の金銀出入と社会慣習』(清文堂、2008)大平祐一「『出入』の終了─江戸時代の民事訴訟手続─」(立命館法学327・328、2009)「判決がでたあと─江戸時代の『訴訟社会』像」(夫馬進編『中国訴訟社会史の研究』所収、2011、京都大学学術出版会)吉田正志「賭けと裁判-湯起請・鉄火・起請文・公事銭-」(『法文化のなかの創造性-江戸時代に探る』、創文社、2005)、林屋礼二・石井紫郎・青山善充編『図説 判決原本の遺産』(信山社、1998 年)『明治前期の法と裁判』(信山社、2003 年)林屋礼二・菅原郁夫・林真貴子編『統計から見た明治期の民事裁判』(信山社、2005)、藤原明久「明治九年太政官弟99 号布告債権譲渡法の成立と展開」(神戸法学雑誌58-2、2008)など。 第10回 大平祐一「人殺出入(1)・(2)-江戸幕府評定所における刑事事件の審理とその特徴」(立命館法学365・366、2016)、同「江戸幕府の刑事裁判と『手続の選択』-『吟味筋』かそれとも『出入筋』か」(水林彪ほか編『法と国制の比較史-西欧・東アジア・日本』所収、日本評論社、2018)、同「刑事裁判と『私人による出訴』」(立命館法学377、2018)、同「江戸幕府評定所の裁判と裁判手続(1)・(2)」(立命館法学401、402、2022)、奥村郁三「唐代裁判手続法」(『法制史研究』10、1959)、同「断獄律・依告状鞫獄の条について-律令の糾問主義と弾劾主義」(法学雑誌11-2、1964)、寺田浩明『中国法制史』(東京大学出版会、2018) 第11~12回 神保文夫「幕府法曹と法の創造-江戸時代の法実務と実務法学」(『法文化のなかの創造性-江戸時代に探る』、創文社、2005)、拙稿「明治初年大阪の行政・司法組織-その人的資源の供給源」(『近代大阪と都市文化』大阪市立大学文学研究科叢書4、清文堂、2006)同『「大坂町奉行所」から「大阪府」へ(1)・(2・完)-幕末から明治初年における町奉行所与力・同心の動向を中心に-』(奈良法学会雑誌12 巻3・4号、13 巻2号、2000~2002)など。 第13~14回 勝俣鎮夫『戦国法成立史論』(東京大学出版会、1979 年)、牧英正「下手人という仕置の成立」(『法制史学の諸問題』所収、1971 年)、清水克行『喧嘩両成敗の誕生』(講談社選書メチエ、2006)、谷口眞子『武士道考-喧嘩・敵討・無礼討ち-』(角川叢書、2007)など。 第15回 我妻栄『法律における理屈と人情』、末広厳太郎『嘘の効用』、石井紫郎『日本国制史研究Ⅱ 日本人の国家生活(東京大学出版会、1986 年)、拙稿「近世幕府法における『作略』の意義と機能」(「法学雑誌」37-4、38-1、1991 年)など。
オフィスアワー
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教員への連絡方法(メールアドレス等)
- 外部公開シラバスのためデータがありません / Please use UNIPA syllabus -
その他
法学政治学専攻開講科目「日本法制史特論A」との合同開講とする。

Updated on 2024/2/27 6:27:25

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